苦海浄土 石牟礼 道子・著 感想
苦海浄土 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 第3集) (2011/01/08) 石牟礼 道子 商品詳細を見る |
『内容紹介
水俣の不知火海に排出された汚染物質により自然や人間が破壊し尽くされてゆく悲劇を卓越した文学作品に結晶させ、人間とは何かを深く問う、戦後日本文学を代表する傑作。三部作すべて収録。
〈ぼくがこの作品を選んだ理由 池澤夏樹〉
ある会社が罪を犯し、その結果たくさんの人々が辛い思いをした。糾弾するのはたやすい。しかし、加害と受難の関係を包む大きな輪を描いて、その中で人間とは何かを深く誠実に問うこともできるのだ。戦後日本文学からこの一作をぼくは選んだ。
内容(「BOOK」データベースより)
「天のくれらす魚」あふれる海が、豊かに人々を育んでいた幸福の地。しかしその地は、海に排出された汚染物質によって破壊し尽くされた。水俣を故郷として育ち、惨状を目の当たりにした著者は、中毒患者たちの苦しみや怒りを自らのものと預かり、「誰よりも自分自身に語り聞かせる、浄瑠璃のごときもの」として、傑出した文学作品に結晶させた。第一部「苦海浄土」、第二部「神々の村」、第三部「天の魚」の三部作すべてを一巻に収録。』
「沈まぬ太陽」、「白い巨塔」で有名な山崎豊子のような社会の暗部をえぐるような作品だけどこっちはちょっと違うかな。
山崎豊子が描くとすごく単純化されて会社=悪、個人=正義ってみえてわかりやすいのはいいんだけど鼻につくというか。
こっちの「苦海浄土」は描き方はそこまで単純じゃないのがいい。
まあ確かに水俣病を放置してたのは国の責任なんで糾弾されるのは当たり前なんだけどそこばかりを描いていないのがこの作品のいいところで。
石牟礼道子という作者を不覚にもこの「苦海浄土」で初めて知ったけど文章がうまい。
独特の感性で描かれていて故郷をホントに愛しているんだなあっていうやさしい眼差しで描かれているのがいい。
水俣病さえなければこの村は本当に平和で牧歌的で幸せの村だったんだなということがよくわかる。
だいたい「水俣病」っていう名前すら差別的なんだよな。
なんだか水俣村が悪いみたいな感じだし。
と書いててホント国の対応に頭くる、震災での国の対応もそうだけど、ホント日本って嫌になってしまうなあと改めて思った。